公務員の志望動機が地元だからの場合は面接でどう伝えるべきか?

一昔前の採用試験、特に地方公務員試験では、1次試験の筆記試験でほとんどの受験生を振り落とし、2次試験の面接では、よほど問題がある(公務員としての適応が難しい)受験生を落とす以外は通過させる、いわゆる形式的なものでありました。

しかし、最近は筆記試験に対し、面接試験の比重が高くなっている傾向にあります。

それは面接の配点が筆記試験の2,3倍以上という自治体も珍しくないこと、また、面接での競争率が数倍に及ぶ傾向からも伺うことができます。

それほど採用試験では重要な位置を占めるようになってきた面接ではありますが、受験生は筆記試験に力を入れ、その後の面接は筆記試験合格後に対策を講じるというのが実情のようです。

その面接の中で特に受験生を悩ますのが「志望動機」です。

自己PR等は自分のことなのでなんとでも書けるのですが、志望動機はなかなか書けないという声を受験生からよく聞きます。

ここでは公務員を受験する人たち、特に地方公務員に絞った面接での「志望動機」について元面接官の立場からご紹介していきます。



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そもそもなぜ、面接重視なのか

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その前にまず、面接についてお話をさせていただきます。

なぜ、昔のような筆記試験重視でなく、面接、つまりは人物重視に変わったのか。

それは公務員に求められる仕事の内容が変わったことです。

昔は紙1枚1枚に手書きで文章を作成し、間違えては書き直し、根拠を調べるにしても辞書のような法令集を読みこんで仕上げていきました。

その点、今では書き直しはパソコンで何度もできますし、表計算も電卓なしで図表まで出してくれます。法令集もネット検索で簡単に調べられます。

このようなPC導入による業務の効率化に加え、各役所が直面した財政危機で行政改革が進められ、結果的に人件費の削減、つまり採用の抑制が図られました。

このため、以前は3,4人で執り行っていた仕事を1人で回さなければなくなり、また育児休業の取得推進で、そのカバーも行うなど、1人の職員への負担が重くなりました。

また、社会の変化で昔と比べて公務員の風当たりも強くなり、苦情処理等での職員の精神的な負担も増してきました。

このため、うつ病等による精神疾患で病気休暇、さらには病気休職を取得する職員も激増し、行政ではメンタルヘルスを実施するなど職員の心の病は行政課題の一つでもあります。

ですから、入社前の面接の段階で、メンタルが強い職員、打たれ強い職員、また困難事案にぶつかったときに、それを独りでなくチームワークで乗り越えられるかを見極める意味で、面接、いわゆる人物重視の方向になってきています。

志望動機は恋愛対象者にあなたのここが好きですというのと同じ

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さて公務員に限らず試験における面接ですが私は恋愛に似ていると思っています。

自己PRや長所は「私はここが自慢できるので、好きになってくださいね」と相手へのアピールするのと同じです。

また、志望動機は「私はあなたのここが気に入ったので好きになりました」と相手への思いを伝えるのと同じです。

一方、好意を持たれることで嫌な気分になる人は少ないでしょうが、好きになった理由によっては、いくら好意を寄せられても気分を害する場合があります。

それは面接も同じで、好きになった理由、つまり志望動機が「福利厚生が充実している」「安定している」では「結局はそこか」とそっぽを向かれます。

しかし、志望動機が本当にそこである場合、志望動機は嘘を書かなければならないのでしょうか?

その必要はありません。

あなたがその役所を志望する理由をどんな細かいことでもいいですから、一言で20挙げてみてください。

一つくらいは福利厚生や安定以外の理由がでてくるのではないでしょうか。

志望動機は決して1番の理由を書く必要はありません。

5番手でも6番手でもいいですから、相手が興味を持ってくれそうな内容を書けばいいのです。

ただ、5,6番目では、面接官に説明するときの意欲や、問題の掘り下げ点が薄くなってしまいますので、しっかりとした理屈付けは必要です。



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志望動機の内容

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公務員、特に地方公務員の受験生が志望動機として挙げるのが観光、産業、地域イベント等の商工関係が目立ちます。

実際、わかりやすいテーマですし、志望動機として挙げるのは間違いではありません。

ですが、面接官からすると他の受験生も同じ志望動機なので「またか」となります。

質問して返ってくる答えも大きく差があるわけではありません。

その一方、面接官が話を聞きたくなる志望動機があります。

祉や介護、それに税金など、役所の職員にもあまり人気がない職場の仕事です。

商工関係と異なり地味ですし、直接市民から苦情がきますし、なにより楽な仕事ではありません。

そこをあえて志望動機に挙げるとすれば、面接官も興味を持って聞きたくなるというのが実情です。

例えば
自動車税を毎年払っているのですが、学生の私にはかなりの高負担で、そのためにアルバイトをしています。
そのたびに税金の重みを実感し、税金の使われ方つまりA県の施策に関心をもちました。
しかし、税金を払える所得がありながら、税金を払わない人がいると聞きます。
特にA県は税金の徴収率が低いため、公平な税負担こそが県の施策実行に必要と認識し、苦労が多い部署とは思いますが、税の徴収にかかわる仕事を希望します。

決して専門的なことを書いているわけではありませんし単純な内容ですが、この文だけで面接官は

  • 自動車税を自分で払っているうえ、そのためにアルバイトをするなど感心
  • 県庁の施策実行に必要な税金徴収の問題を認識
  • 日の当たらない縁の下の力持ち的な部署の苦労を理解

ということで高評価となります。

さらにこの志望動機を基に

  • 市の施策のどこに関心を持ちましたか
  • 徴収率を上げるならどういう方法がありますか
  • 税金についてどのように考えますか

との問答の対策を立てられます。

ただここで勘違いしてほしくないのは、面接官は問答に対しての正解を求めているわけではないということです。

むしろ面接官は自分の意見をはっきりいえるか、明るく元気で若さとバイタリティを感じるか、ここだけを求めています。

つまり口に出さなくとも自分はメンタルが強いという印象を与えさえすればいいのです。

ですからよっぽど勘違した答えさえしなければ志望動機はクリアできます。

すらすらと答えられなくとも、たどたどしくても、その人柄から一緒に働いてみたいと思わせればいいのです。

逆に能面のように感情なく話していると、どんなにいいことを言っても冷たく気持ち悪く感じ、決していい評価にはなりません。

地元の役所を受験するときの志望動機はどのようにすればいいのか

・地元以外で培った経験を地元に還元する姿勢がわかりやすく、説得力がある
・地元在住の人は地元のプロジェクトを勉強し、他市町村と比較し、自分の意見を述べる

地方公務員は地元で生まれ育った人が多く受験します。

ですから地元で生まれ育った人が地元の役所を希望する場合、志望動機に大して内容に差がでません。

これは、地元で生まれ育った人は地元の良さも悪さも比べる尺度が地元での経験だけですので、仕方がないことではあります。

採用区分も役所によって様々ですが、高校卒業程度でしたら、私はこれでいいと思います。

しかし、大学卒業程度の採用区分でしたら、東京などの都会でUターンする人も多く、かなりきついかもしれません。

それは、最近、民間企業経験者等の採用が増えていますが、受験の要件に「地元以外の会社でO年経験した人」等が多く見受けられます。

つまり、いったん外部で勉強や仕事を経験することで地元の良さや悪さを認識し、さらには外部で培ったことをどう地元に還元するのか求めているのです。

また若いうちに外部に出て様々な経験をした人は視野が広いと評価されがちです。

例えば
学生時代XX市で4年間過ごしました。シャッター商店街が目立つ中、XX市では市内に人を呼び込もうとOOOな企画を実行した結果、活気が戻り外部の私でもここで生活してみたい気持ちになりました。一方、私の育った生まれ育ったZZ市(受験する役所)でも地域振興としてAAの取り組みが行われてきます。私はAAの他にZZ市の地域の産物を商品化し、人とモノとカネが流れ込むようZZ市で地域振興に携わりたいです。

これも単純ですが、この文だけで外部で視野を広げてきて、さらにそれを地元で還元したいという意欲が現れています。

外部での経験をどう仕事に活用するかという点でも説得力があるものになります。

地元の地方公務員を受験する方は、外部で得た経験を地元に還元したいというスタイルで志望動機を書くのが、面接官へアピールしやすいと思います。

一方、外部に出たことがない人は、外部での経験という点では勝負できませんので、その分、地元役所のこの施策に興味を持ち、他市町村と比較し、自分ならさらにこうしたいという方法で対処したほうがいいと思います。

できればその市町村が目玉にしているプロジェクトでしたら、面接官の関心も高くなるはずです。

志望動機で気を付けなくてはならないこと

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一つは役所批判です。

確かに役所の施策は十分でない場合があります。

しかし、そこがダメだと批判されては面接官もいい気がしません。

もし、どうしてもそこをアピールするのでしたら
「OO市はこの施策に対し■■という行動をしていますが、私は別の面から△△というアプローチができるのではと思い、その検討をしてみたいとも考えています」くらいがいいです。

もう一つは事実誤認です。

先ほど自動車税を基にした志望動機の話をしましたが、「自動車税」は都道府県が課税するものであり、市町村が課税するものではありません。

一方「軽自動車税」は市町村が課税するものであり、都道府県が課税するものではありません。

ですから先ほどの話を市町村でしたとしても、大筋は間違えではないのですが、根本が間違っていているため、効果が半減します。

これに限らず、「うちの役所の仕事ではないんだけどなあ、国の仕事だから国を受ければ」と思われましたら、志望動機自体が根底から崩れることになります。

志望動機は「間違ったことを言わない」ことを確実に押さえておく必要があります。

志望動機の仕事内容はそこまで重要か

  • 仕事内容以上に、受験する役所が第一志望というのを認識してもらうのが一番
  • 志望動機にもメンタルが強いという要素を入れられるとよい
  • いくら内容が整っている志望動機でも、役所が求めているものと異なれば意味がない
  • 役所が何を求めているのかを間違いなく抑えておく必要がある

最後に、志望動機の仕事内容は、どこまで、うちの役所に興味があるのかを示す上で重要な内容でありますが、面接官も、そこまで仕事内容の記載に期待しているわけではありません。

なぜなら、実際働いたことがないのに、役所の人間より実情を詳しいはずはないからです。

ですから「好き」といっても、勘違いや不快に思わなければマイナスに評価されることはありません。

一方、「あなたのことが一番好き」(第一志望)といいながら、公務員を受験する人は併願をいくつも抱えていますし、内定が重なれば辞退する人も多くいます。

そのことを面接官はわかっていますので、面接官は志望動機の内容を見ながら、その受験生が自分の役所を第一志望か否かを見極めています。

志望動機はこのような仕事をやりたいという気持ちももちろんですが、それ以上にあなたの役所が本当に第一志望ということをアピールし、わかってもらえるほうが大事です。

また最初に述べた通り面接の重要性が高まる中、メンタルに強く困難事案に立ち向かえる人材かを選定する作業でもあります。

なかには経験から自己アピールだけでなく志望動機にもその要素を盛り込んでくる受験生も多くいます。

つまり、あなたのここが好きだよというだけでなく、自分もこういうところが強みだからフィーリングが合うんじゃないのといっているのです。

また、面接では役所がどういう人材を求めているのかをリサーチして、それに合致した内容を短時間でアピールできるか、ここが決め手になります。

ですからいくら内容が整った自己アピールや志望動機でも、役所側が求めている内容に合致していなければ、強調すれば強調するほど方向性がずれてしまいます。

好きになった相手に対し、自分の良さを押し通すのか、相手の好みに合わせるのか、難しいところでもありますが、まず相手の好みの対象を知る必要が最も重要だと思います。



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