公益法人会計基準注解の狙いは何か?
公益法人という言葉から何を連想しますか。
一言で申すと公共性です。
株式会社のような営利法人とは対立概念であります。
そんな公益法人の趣旨を踏みにじる汚職事件が起こりました。
それはKSD(中小企業経営者福祉事業団)が引き起こした事件です。
具体的には、国会質問の謝礼としてKSD側から賄賂(わいろ)を受け取った受託収賄容疑で2名の前参議院議員が逮捕されました。
国に「KSD汚職の徹底解明に関する意見書」を東京都議会議長が平成13年3月29日に提出するほどです。賄賂の金額は20億円で、運営資金が流用されました。その資金源は中小企業経営者の共済保険料です。
苦労して稼いだお金を乱用したKSDに対して、国民の怒りは燃え広がりました。
このように公益法人は私物化されたのです。
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社会的要請により公益法人会計基準注解が誕生した
KSD事件当時は国民のチェック機能がありませんでした。
そこでいかに公益法人を国民のフィルターにかけるのかが課題になります。
そこで誕生したのが公益法人会計基準注解です。
注解は14項目ありますが、注目すべき点は大規模公益法人にキャッシュフロー計算書の提出を義務付けたことであります。しかも最初に記載されています。
キャッシュフロー計算書とはその名のとおり、資金の流れを示す表です。従来は正味財産増減計算書がその役割を果たしていましたが、収入と支出が単純に記載されているだけで、運用方法を分析するのには不向きであります。
その弱点を補うキャッシュフロー計算書の特徴は、資金の出入りを3段構えに分けたことです。
具体的には営業活動での増減、そこからいくら投資したかという投資活動での増減、借入金などの財務活動での増減と分かれています。
資金の増減の原因が分析しやすくなりました。
この表の存在が、公益法人に対して牽制になるのではないのでしょうか。
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公益法人の会計は専門家でもあまり知られていない
公益法人会計基準注解は公認会計士や税理士などの専門家でもあまり知られていません。
理由は2つあります。
②顧問先に公益法人が少ないので、実務に慣れていないこと
それを解決したのが実はキャッシュフロー計算書です。
公認会計士や税理士がふだん接する営利企業はキャッシュフロー計算書を作成しているケースが多いからです。
また、株式投資でも有価証券報告書にキャッシュフロー計算書は必ず表示されます。
そもそも認知されるとなぜ公益法人に対する牽制になるのでしょうか。
それはキャッシュフロー計算書がごまかしの効かない表だからです。
通常、キャッシュは預金で管理しますが、通帳残高を操作することはできません。
だから、一般的に認知されている点と金額を都合よく調整できないことで、国民がチェックできる仕組みが出来上がっています。
それが公益法人会計基準注解なのです。
公益法人会計基準注解は国民にチェックさせるシステム
キャッシュフロー計算書の提出を義務付けることにより、国民が公益法人の役割を果たすかどうかをチェックしやすくなりました。
いかにKSD事件のような悪質な行為を防ごうとする意思が感じられます。
しかも公益法人会計基準はさらに改正されているのです。
内容は含み益・含み損を事業活動による利益の計算から除外して、直接資産を増減させるようになりました。営利企業に準拠しています。
このように営利企業の基準に近づけることで誰にでもわかる仕組みができています。
そのゴールは公益法人の不正防止です。
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